• 2026年10月7日

朝・昼・夜、いつの血圧を見るのが大事?家で血圧を測る意味とは?高血圧と合併症の関係を医師が解説|新橋・汐留の伊原医院

昼間の診察では血圧が落ち着いていたのに、翌朝、家で測ると高い。反対に、病院でだけ数値が上がる。こうした違いは、どちらかの血圧計が間違っているとは限りません。

普段の血圧管理の基本は、家庭で「朝」と「就寝前」に測ることです。特に朝の血圧は見逃したくない情報で、睡眠中の血圧にも、将来の脳卒中や心不全などを考えるうえで重要な意味があります。昼の数値が良いだけでは、朝や睡眠中まで良好とは言い切れません。

家で測る目的は、毎日の数字に一喜一憂することではなく、診察だけでは見えない時間帯の血圧を知り、合併症を防ぐための治療につなげること。新橋・汐留の伊原医院が、測る時間の違いと、研究から分かっていることを解説します。

朝、自宅で上腕式血圧計を使う男性と、夜に眠る様子を描いた家庭血圧と夜間血圧のイラスト
朝の記録から、診察室では見えない「家庭血圧」に目を向けましょう。

まず押さえたいポイント

  • 家庭血圧は朝・就寝前をセットで記録しましょう。朝が高い状態の方は、昼が正常範囲内だからと安心できません。
  • 「寝る前に測った血圧」と「眠っている間の血圧」は別です。夜間睡眠時の高血圧が様々な合併症と関係することが分かっています。
  • 記録を診療に生かすことが大切です。薬の量や飲む時刻は自己判断で変えないでください。

朝・昼・夜、いつの血圧を見るのが大事?

日々の記録は朝と就寝前が基本です。どれか一つの時間帯だけで、24時間の血圧を代表させることはできません。まず朝の測定を生活に組み込み、夜の記録もそろえると、診療で判断できることが増えます。[1・2]

血圧を測る時間帯と、それぞれの役割
時間帯 何を知るために測る? 測り方・注意点
朝 起床後の血圧と、次の服薬前までのコントロールを確認 起床後1時間以内、排尿後、朝食・降圧薬の服用前
昼・仕事中 活動や仕事に関連した上昇、症状が出るときの状態を補足 必要に応じ医師と相談。時刻・症状・活動内容も記録
夜(就寝前) 一日の終わりの血圧を、朝と比較 就寝直前に安静にして測る。飲酒・入浴などの影響も記録
睡眠中 眠っている間も血圧が高くないかを確認 必要に応じ24時間血圧測定(ABPM)や夜間自動測定対応の血圧計を使用

昼は活動や緊張、食事などの影響を受けます。毎日昼にも測ることを全員に求めるわけではありませんが、仕事中に血圧が上がる方や、めまいなどが出る方では追加の記録が役立つことがあります。

就寝前の家庭血圧が正常でも、睡眠中の血圧が高い場合もあります。[5・6]


早朝の血圧が高いと、どんな合併症に関係する?

起床前後は血圧が上がりやすい時間帯

血圧は一日中一定ではありません。起床に向けて交感神経が働き始め、体を動かす準備に伴って上がります。朝の家庭血圧が繰り返し高い状態を「早朝高血圧」と呼び、睡眠中から高値が続くタイプや、起床前後の上昇が大きいタイプがあります。[1]

日本の大規模研究で、脳卒中・冠動脈疾患との関連

日本のHONEST研究では、治療中の高血圧患者21,591人を約2年間追跡しました。朝の家庭の上の血圧が高い群ほど、脳卒中や冠動脈疾患が多く、冠動脈疾患の予測では診察室の血圧より有用である可能性が示されました。冠動脈疾患は、心臓に血液を届ける血管の病気で、心筋梗塞などが含まれます。[4]

つまり、「受診時は良かったから、朝の高い値は気にしなくてよい」とは言えないのです。日本高血圧学会も2025年に「早朝高血圧徹底制圧宣言」を公表し、朝の血圧に着目した啓発を進めています。朝の血圧を確かめることは、症状を待たずにリスクを見つける入り口です。[3]


夜間、眠っている間の血圧も大切な理由

眠っても血圧が十分に下がらないことがある

一般に血圧は、睡眠中には日中より低くなります。ところが、睡眠中も高い状態が続いたり、逆に日中より高くなったりする方がいます。本人が眠れていても、血圧が十分に下がっているとは限りません。

日本のJAMP研究では、心血管リスクを持つ6,359人を平均約4.5年間追跡し、睡眠中の上の血圧が高いことと、脳卒中・冠動脈疾患・心不全などの発症との関連を調べました。特に、日中より夜間の血圧が高い「ライザー型」では、通常の昼夜の変化を示す群と比べて、心不全のリスクが高いことが報告されています。[5]

さらに、J-HOP夜間血圧研究では、心血管疾患の既往またはリスクを持つ2,545人を対象に、専用の家庭血圧計で睡眠中に自動測定した血圧を調べています。睡眠中の上の血圧が高いほど将来の心血管疾患が多いという関連は、診察室や朝の家庭血圧などを考慮しても認められました。[6]

夜間血圧は、目覚ましをかけて測るものではありません

必要な場合は、携帯型の装置が一定間隔で測る24時間自由行動下血圧測定(ABPM)や、夜間の自動測定に対応した家庭血圧計で調べます。夜中に自分で起きて測った値は、睡眠中の血圧とは条件が違います。[1・6]

強いいびき、睡眠中の呼吸停止、日中の眠気がある場合は、睡眠時無呼吸症候群が血圧に関係している可能性もあります。朝の高血圧が続く方は、血圧の記録と一緒に睡眠の様子も伝えましょう。[7]


家で血圧を測る意味とは?「隠れた高血圧」を見つけるために

診察室は、普段の生活のごく一部分です。家庭で同じ条件の測定を重ねると、受診日だけでは分からない傾向が見えてきます。

  • 仮面高血圧:診察室では高くないのに、家庭などでは高い状態。診察室だけを見ると見逃すことがあります。
  • 白衣高血圧:診察室では高く、家庭では高くない状態。緊張なども関係しますが、その後の変化を含め定期的な確認が必要です。
  • 治療の過不足:薬を飲んでいても朝は高い、逆に低い値とふらつきが重なる、といった情報を把握できます。

家庭血圧の記録は、薬を始める必要があるか、今の治療で十分かを相談する材料になります。測定そのものが合併症を防ぐのではなく、記録を医療者と共有し、生活改善や必要な治療に生かすことが重要です。[2・8]

高血圧は、脳や心臓だけでなく腎臓の血管にも負担をかけます。腎機能が低下すると塩分や水分を排出しにくくなり、血圧がさらに上がることもあります。そのため診療では、血圧とともに尿検査や腎機能、血糖・脂質なども確認します。[7・12]


家庭血圧の正しい測り方――まずは1週間、朝と夜を記録

  1. 上腕に巻くタイプの血圧計を用意する。腕の太さに合うカフを使います。手首式やカフのない機器とは測定条件が異なるため、選び方に迷ったら相談してください。
  2. 朝は起床後1時間以内、排尿後、朝食と降圧薬の服用前。測定のために処方された薬を抜いたり、服用を大きく遅らせたりはしません。
  3. 夜は就寝直前。入浴・飲酒・運動の直後は避け、なるべく同じ条件にそろえます。
  4. 椅子に座って1~2分休む。背中を支え、足を組まず床につけ、腕とカフを心臓の高さに保ちます。測定中は話さず、力を抜きます。
  5. 1回の機会に原則2回測り、両方の値と平均を記録する。低い数字が出るまで測り直したり、高い値だけ消したりしないことが大切です。
  6. まずは1週間分を用意する。可能なら毎日、少なくとも週5日以上の朝・夜の記録を診察時に見せてください。血圧手帳でもアプリでも構いません。

日付、朝・夜の区別、上・下の血圧に加え、脈拍、症状、服薬時刻、普段と違う飲酒や睡眠不足なども書き添えると、読み解く助けになります。朝と夜は分けて平均を見ます。[2・9]

完璧な記録がそろうまで受診を待つ必要はありません。健診で要受診とされた場合や高い値が続く場合は、手元にある記録を持ってご相談ください。


家庭血圧はいくつから高い?診断基準と治療目標の違い

「135/85」と「125/75」を見かけて、どちらが正しいのか迷うことがあります。前者は家庭血圧で高血圧を判断する目安、後者は治療中に原則として目指す値です。用途が違います。単位はいずれもmmHgです。[1・10]

高血圧の診断の目安と、治療目標は別の数字です(成人)
測定する場所・時間 高血圧の診断の目安 治療中の原則的な目標
診察室 上140以上、または下90以上 上130未満、かつ下80未満
家庭(朝・就寝前) 平均で上135以上、または下85以上 上125未満、かつ下75未満
睡眠中(ABPM) 睡眠中の平均で上120以上、または下70以上 昼夜の値や症状も含め、医師が個別に判断

診断の目安は上か下のどちらか一方が該当すれば確認が必要です。1回の値だけで決めず、複数日の平均や診察結果を合わせて判断します。一方、治療目標は「上も下も目標未満」が原則ですが、ふらつき、体力、腎機能などを踏まえて調整します。妊娠中などは別の判断が必要です。[1・10]

朝だけ高い方も、記録を持って相談を

朝または夜の家庭血圧の平均が上135以上、または下85以上なら、医療機関で確認しましょう。それ未満でも、治療中で主治医と決めた目標を超える、以前より上がった、腎臓病や糖尿病がある場合は相談の対象です。[2・10]

急いで対応したい血圧・症状

上180以上、または下120以上の著しく高い値が出て、症状がない場合は、安静にして再測定し、高いままなら速やかに医療機関へ連絡してください。

胸の痛み、強い息苦しさ、突然の片側の手足の麻痺、言葉が出ない、意識の異常などがある場合は119番を含む救急対応が必要です。血圧の数値にかかわらず、下がるのを待ったり、何度も測り続けたりしないでください。薬を追加で飲むかどうかも、自己判断しないようにします。[9]


朝・夜の血圧が高いとき、何を見直す?

測定条件を確認したうえで、塩分の多い食事、体重増加、飲酒、運動不足、睡眠不足などを振り返ります。例えば、朝の記録と一緒に前日の夕食や飲酒を書いておくと、診察で生活の改善点を話しやすくなります。高血圧の方の減塩は食塩1日6g未満が基本の目安です。[7・10]

治療中であれば、飲み忘れ、薬の効果の持続、ほかの薬や病気の影響も確認します。血圧が下がったからといって、治ったと考えて服薬をやめると再び高くなる場合があります。

「夜間が高いなら、薬を夜に飲めばよい」とは限らない

2025年のBedMed試験は、カナダの高血圧患者3,357人を対象に、降圧薬を朝に飲む方法と就寝時に飲む方法を比較しました。約4.6年の追跡で、就寝時の服用によって死亡や主な心血管イベントが減るという有意な差は認められませんでした。[11]

この試験は夜間高血圧の患者さんだけを対象にしたものではなく、個別の服用時刻の調整を否定する結果でもありません。全員が夜へ変更すればよいという根拠にはならないため、朝・夜の記録、症状、薬の種類、生活リズムを踏まえて主治医と決めます。


よくあるご質問(Q&A)

Q.朝と夜のどちらか一方しか測れない日は?

A.測れた時間帯の値を、そのまま残してください。欠けた日の数字を埋める必要はありません。朝の高血圧を見逃さないため、起床後の測定を習慣にし、夜も測れるよう生活に合う方法を相談しましょう。

Q.朝は高いのに、昼には正常です。放置して大丈夫?

A.昼の値だけで問題ないとは判断できません。測り方をそろえた朝の値を数日分記録し、受診時に見せてください。服薬中の方も同様です。

Q.1回目と2回目が違います。低い方を書いてよい?

A.都合のよい方を選ばず、両方と平均を残します。毎回大きく違う、エラーが多い場合は、血圧計やカフの使い方も診察で確認してもらいましょう。

Q.症状がなければ、家庭で測る必要はありませんか?

A.高血圧は自覚症状がないことが多いため、体調だけでは判断できません。健診で指摘された方や治療中の方は特に、家庭での記録が役立ちます。


新橋・汐留で、朝の高血圧や家庭血圧が気になる方へ

「病院では正常なのに家では高い」「薬を飲んでいるのに朝だけ高い」「手帳の数字をどう見ればよいか分からない」。そんなときは、血圧の記録を診察時にご持参ください。

伊原医院では、高血圧について、治療の必要性を判断したうえで、生活指導・外来治療・経過観察を行っています。朝・夜の血圧記録、健診結果、お薬手帳があると、普段の状態を共有しやすくなります。必要な検査や、睡眠中の血圧を評価する必要性についても診察でご相談ください。

当院は東京都港区東新橋1-7-1 汐留メディアタワー地下2階にあります。都営大江戸線「汐留駅」地下2階直結、JR「新橋駅」から徒歩約4分(地上ルート)です。仕事のある日の朝の記録も、休日の記録も、いつもの生活を知る大切な手がかりになります。

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あわせて読みたい記事:健診で血圧が高いと言われたら?高血圧の症状・原因・治療 / 腎臓を守る生活習慣と腎機能の見方

本記事は2026年10月6日時点で確認した厚生労働省・日本高血圧学会などの公開資料、JSH2025の公開情報および関連研究をもとに作成しています。主に妊娠中を除く成人を対象とする一般的な説明です。個々の診断・目標値・治療は診察で判断します。

参考情報

  1. 日本高血圧学会:高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025、英文公開版) / 公式案内・正誤表
  2. 日本高血圧学会「家庭で血圧を測定しましょう」
  3. 日本高血圧学会「早朝高血圧徹底制圧宣言2025」
  4. Kario K, et al. Morning Home Blood Pressure Is a Strong Predictor of Coronary Artery Disease: The HONEST Study. JACC. 2016.
  5. Kario K, et al. Nighttime Blood Pressure Phenotype and Cardiovascular Prognosis: Practitioner-Based Nationwide JAMP Study. Circulation. 2020.
  6. Fujiwara T, et al. Nighttime Blood Pressure Measured by Home Blood Pressure Monitoring as an Independent Predictor of Cardiovascular Events in General Practice: The J-HOP Nocturnal Blood Pressure Study. Hypertension. 2019.
  7. 厚生労働省 e-ヘルスネット「高血圧」
  8. 米国心臓協会:2025年高血圧ガイドラインの要点(家庭血圧を診療に組み込む意義)
  9. 米国心臓協会:Home Blood Pressure Monitoring(測定方法・著しい高値への対応)
  10. 日本高血圧学会:Key highlights of JSH2025(診断基準・治療目標など)
  11. Garrison SR, et al. Antihypertensive Medication Timing and Cardiovascular Events and Death: The BedMed Randomized Clinical Trial. JAMA. 2025.
  12. 厚生労働省 e-ヘルスネット「CKD/慢性腎臓病」
  13. 日本高血圧学会「高血圧診療ガイド2026」公式発行案内

この記事の監修者

山下 理比路

医療法人社団優春会伊原医院 理事長
山下 理比路

  • 医師/医学博士
  • 日本集中治療医学会 集中治療専門医
  • 日本医師会認定 産業医
  • 日本内科学会 正会員
  • 日本循環器学会 正会員
  • 日本医師会「かかりつけ医機能報告制度にかかる研修」修了

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