• 2026年11月8日
  • 2026年11月7日

血圧を10下げると脳卒中リスクが約27%低下?高血圧の治療で防ぎたい合併症を医師が解説|新橋・汐留の伊原医院

「血圧が150から140に下がった。たった10の違いで、体に何か良いことがあるのでしょうか?」。数字が改善しても、体調に変化がなければ、治療の手応えは感じにくいかもしれません。

上の血圧を10mmHg下げる治療によって、脳卒中の相対リスクが約27%、心不全が約28%低下したという大規模な研究結果があります。これは継続した降圧治療を比較した研究の結果です。[1]

今回は、高血圧で起こりやすくなる合併症から、血圧を下げる効果、目標値の考え方までを解説します。「症状はないけれど治療した方がよいのか」と迷っている方も、ご自身の健診結果と照らし合わせてみてください。

上腕式血圧計と血圧の推移を表す手帳、脳と心臓を描いた水彩イラスト
血圧の管理を、脳や心臓の病気の予防につなげましょう。

この記事で分かること

  • 血圧を下げる目的は、脳卒中や心臓病などの発症を減らすことです。
  • 「27%低下」は研究全体で相対的な効果があったことを意味します。
  • 目標は診察室で130/80mmHg未満、家庭で125/75mmHg未満が基本です。体調や病気に合わせて調整します。

症状がなくても、高血圧で合併症が起こるのはなぜ?

血圧は、血液が血管の壁を押す圧力です。高い状態が長く続くと血管が傷みやすくなり、血液を送り出す心臓にも負担がかかります。[2]

  • 脳卒中:脳の血管が詰まる脳梗塞や、血管が破れて出血する脳出血など。麻痺や言語障害が残り、日常生活に大きな支障が出る場合があります。
  • 心筋梗塞・狭心症:心臓の筋肉へ血液を届ける冠動脈の病気です。高血圧に加え、喫煙や脂質異常症、糖尿病などが重なると、リスクはさらに高くなります。
  • 心不全:心臓の働きが十分でなくなり、息切れやむくみなどが現れる状態です。血圧の高い状態は、心臓が血液を送り出す負担を増やします。
  • 慢性腎臓病:腎臓の細い血管も高血圧の影響を受けます。腎機能が落ちると血圧が上がりやすくなるため、血圧と腎臓の両方を確認します。

症状が出る前に見つかる血圧の上昇は、将来のリスクに対して手を打つ機会になります。[2・3]


血圧を10下げると、脳卒中や心臓病はどれくらい減る?

2016年にLancet誌に掲載された解析では、123件の無作為化比較試験、計613,815人のデータを統合しました。上の血圧(収縮期血圧)を10mmHg下げることに対応する効果は、次の通りでした。[1]

上の血圧10mmHgの低下に対応する相対リスクの減少
評価した病気・項目相対リスクの低下
脳卒中約27%
心不全約28%
冠動脈疾患(心筋梗塞など)約17%
主要な心血管イベント全体約20%

Ettehadら(2016)の結果をもとに作成。

一方、腎不全については同じ解析で統計学的に明確な減少が示されておらず、すべての合併症が同じ割合で減るわけではありません。

5mmHgの改善にも意味はある?

2021年の別の解析では、48試験・344,716人を検討し、上の血圧を5mmHg下げる薬物治療で、主要な心血管イベントの相対リスクが約10%低下しました。既に心血管疾患がある人と、ない人の両方で効果が示されています。小さな改善を積み重ねる意義を裏付ける結果といえます。[4]


「脳卒中リスクが27%低下」は、100人中27人が助かるという意味?

いいえ。元の発症リスクに対して、割合で27%少なくなるという意味です。実際にどれほどの利益があるかは、年齢、喫煙、糖尿病、腎臓病、過去の脳卒中などによって変わります。

割合を理解するための仮の例

ある期間の発症リスクが10%の集団に、相対リスク27%低下が当てはまると仮定すると、
10% × 0.73 = 7.3%
となります。絶対的な差は2.7ポイントです。


血圧はどこまで下げればよい?診断基準と治療目標を整理

2026年11月時点で確認できる日本高血圧学会の基本指針は「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」です。厚生労働省の資料でも、高血圧と判断する基準と、治療で目指す値は区別されています。[5・6]

成人の高血圧の目安と基本の降圧目標(mmHg)
測る場所高血圧の診断の目安治療で目指す値
診察室上140以上、または下90以上上130未満、かつ下80未満
家庭平均で上135以上、または下85以上上125未満、かつ下75未満

1回の測定だけでは診断しません。また、例えば上の血圧が160から150に下がっても、「10下がったので治療完了」とは限りません。改善の意味を認めながら、次にどこを目指すかを相談します。

低ければ低いほどよい、ということではありません

ふらつき、立ちくらみ、腎機能の変化などにも注意が必要です。年齢だけでなく体力や持病、服薬後の体調を踏まえ、無理なく続けられる治療に調整します。薬を自己判断で増やして急に下げようとしないでください。[5]


生活改善と薬、どちらから始めればよい?

生活習慣の見直しは、薬を使う場合にも治療の土台になります。高血圧の方の食塩摂取は1日6g未満が目安です。麺類の汁を残す、卓上で調味料を追加する前に味を確かめるなど、普段の食事で続けやすい方法を選びましょう。体重の適正化、無理のない運動、飲酒量の見直しも役立ちます。[2・3]

ただし、血圧がかなり高い場合や、糖尿病・腎臓病などがある場合は、生活改善だけで長く様子を見ることが適切とは限りません。薬を始める時期は、血圧の高さと合併症のリスクを合わせて判断します。

診察では、「薬を増やしたくない」「飲むとふらつく」「忙しくて飲み忘れる」といった事情も伝えてください。困りごとが分かれば、薬の選択や続け方を検討できます。副作用が心配なときも、自己中断する前に相談することが大切です。

家庭での記録は朝と就寝前が基本です。詳しい測定方法は、「朝・昼・夜、いつの血圧を見るのが大事?家で血圧を測る意味とは?」で紹介しています。


高血圧の治療と合併症について、よくある質問

Q.血圧が150くらいですが、症状がなければ受診しなくてもよいですか?

A.上の血圧が150前後で繰り返し高い場合は、症状がなくても受診して確認しましょう。家庭の記録や健診結果をもとに、治療が必要かを判断します。

Q.薬で正常になったら、やめても大丈夫?

A.薬が効いて良い値を保っている可能性があります。生活改善などにより減薬できる場合もありますが、自分でやめると再び上がることがあります。家庭血圧と体調を見ながら、医師と相談することが大切です。

Q.10下げれば、必ず脳卒中を防げますか?

A.必ず防げるわけではありません。約27%は研究で示された集団全体の相対リスク低下です。血圧の管理に加え、禁煙、糖尿病や脂質異常症の治療なども含めて予防を考えます。

Q.血圧が急に高くなったときは、どうすればよいですか?

A.上180以上、または下120以上の著しい高値で、症状がなければ安静にして再測定し、高いままなら速やかに医療機関へ連絡してください。突然の片側の麻痺、ろれつが回らない、胸痛、強い息苦しさ、意識の異常などがあれば、血圧の数字にかかわらず119番を含む救急対応が必要です。下がるのを待ったり、薬を自己判断で追加したりしないでください。[7]


新橋・汐留で高血圧の治療を相談したい方へ

血圧の治療は、毎日の数字と将来の暮らしをつなぐ取り組みです。今の値を知ったうえで、自分に合う目標と続け方を決めていきましょう。

伊原医院では、高血圧の治療の必要性を判断し、生活指導、外来治療、経過観察を行っています。「健診で指摘されたままになっている」「今の治療で十分か知りたい」という段階でもご相談ください。健診結果、家庭血圧の記録、お薬手帳をお持ちいただくと、これまでの経過を確認しやすくなります。

東京都港区東新橋1-7-1 汐留メディアタワー地下2階。都営大江戸線「汐留駅」地下2階直結、JR「新橋駅」から徒歩約4分(地上ルート)です。

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お問い合わせ:03-3573-1800

情報確認日:2026年11月4日。厚生労働省、日本高血圧学会などの公開資料と関連研究に基づく、一般的な説明です。個別の診断・治療方針は診察で判断します。

参考情報

  1. Ettehad D, et al. Blood pressure lowering for prevention of cardiovascular disease and death: a systematic review and meta-analysis. Lancet. 2016;387:957–967.
  2. 厚生労働省 e-ヘルスネット「高血圧」
  3. 日本高血圧学会「高血圧の10のファクト」
  4. Blood Pressure Lowering Treatment Trialists’ Collaboration. Pharmacological blood pressure lowering for primary and secondary prevention of cardiovascular disease across different levels of blood pressure. Lancet. 2021;397:1625–1636.(NIH掲載の論文情報)
  5. 日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」公式案内・正誤表 / 発刊案内・降圧目標の解説
  6. 厚生労働省「血圧に関する指標等について」
  7. 米国心臓協会:When To Call 911 About High Blood Pressure(著しい高値・緊急症状への対応)

この記事の監修者

山下 理比路

医療法人社団優春会伊原医院 理事長
山下 理比路

  • 医師/医学博士
  • 日本集中治療医学会 集中治療専門医
  • 日本医師会認定 産業医
  • 日本内科学会 正会員
  • 日本循環器学会 正会員
  • 日本医師会「かかりつけ医機能報告制度にかかる研修」修了

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