- 2026年10月3日
睡眠薬との上手な付き合い方とは?睡眠薬が必要となる場合や使い分けの方法を医師が解説|新橋・汐留の伊原医院
「夜眠れなくて困っているけど、薬を飲んだほうがいいのか」「薬を飲めば眠れるけれど、このまま続けてよいのだろうか」「夜中に目が覚めるので、今の薬が合っていないのかもしれない」。睡眠薬について相談したいことは、眠れないつらさだけとは限りません。
睡眠薬は、眠れないことで日中の生活に支障が出ているときに、原因の確認や生活の調整と組み合わせて使う治療の一つです。寝つき、中途覚醒、翌朝の眠気、持病やほかの薬を確認し、その方に合う種類と量を選びます。治療の目標は、長く眠ることだけでなく、日中を無理なく過ごせるようになることです。当院では必要に応じて睡眠薬の相談・処方を実施しています。
この記事では、2026年10月1日時点で確認できる厚生労働省・日本睡眠学会の公開資料と各薬剤の電子添文(添付文書)をもとに、睡眠薬が必要となる場面と、代表的な睡眠薬の特徴・注意点を医師が解説します。

- 睡眠時間の数字だけで、薬の必要性は決まりません。
- 薬の使い分けは「強さ」よりも、症状・安全性・生活との相性が大切です。
- 増量、追加服用、急な中止は自己判断で行わず、処方医と相談します。
目次
睡眠薬が必要になるのはどんなとき?
薬と一緒に取り組みたいこと
睡眠薬の使い分け
代表的な睡眠薬の特徴と注意点
安全に付き合うためのポイント
減薬・中止の考え方
よくあるご質問
睡眠薬が必要になるのはどんなとき?
眠る時間と環境を確保しているのに、寝つけない、途中で何度も目が覚める、朝早く目覚めて眠り直せない。その結果、疲労感や集中力の低下などが続く場合は、不眠症の診療の対象になります。生活や睡眠習慣を整えても改善しない場合や、つらさ・生活への影響が大きい場合に、薬物治療を検討します。[2、3]
例えば、寝つくまでの時間が気になって仕事に集中できない、夜中に何度も起きて翌日の家事がつらい、といった困りごとは相談のきっかけになります。一方、生活が不規則になっていて眠る時間そのものが足りない場合は、まず睡眠時間を確保する工夫が必要です。
薬を選ぶ前に、眠りを妨げる原因を探す
不眠の背景には、ストレスだけでなく、痛み、かゆみ、夜間の頻尿、うつ・不安、薬や飲酒の影響などがあります。大きないびきや呼吸が止まる様子、強い日中の眠気があれば睡眠時無呼吸症候群、夕方から夜に脚がむずむずする場合はむずむず脚症候群なども考えます。原因に応じた治療が必要で、睡眠薬を増やすだけでは解決しないことがあります。[4]
生活に支障が出ているなら、長く我慢してから受診する必要はありません。「いつから」「寝つき・途中の目覚め・早朝の目覚めのどれがつらいか」「翌日どう困るか」を伝えてください。
薬と一緒に取り組みたい、眠りの整え方
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、成人は6時間以上を目安に必要な睡眠時間を確保し、目覚めたときの休まった感覚にも目を向けることを勧めています。ただし、必要な時間には個人差があります。6時間を切ったら必ず薬を飲む、8時間眠るまで薬を増やす、という基準ではありません。[1]
- 朝:起きる時刻をなるべくそろえ、朝の光を浴びる。
- 昼:無理のない運動や活動を取り入れ、長い昼寝・遅い時間の昼寝を控える。
- 夜:カフェインや寝酒を避け、寝室の明るさ・音・温度を整える。
- 寝床:眠くないのに早くから横になり続けたり、時計を繰り返し確認したりする習慣を見直す。
睡眠薬はどう使い分ける?「強い・弱い」だけでは選べません
睡眠薬は、脳の興奮を抑える働きを助けるもの、眠りのリズムに関わるもの、覚醒を維持する働きを抑えるものに分かれます。同じ分類でも作用の続き方や併用薬の制限が異なり、誰にでも最適な一剤があるわけではありません。[3]
| 困っていること | 診察で確認すること・治療の考え方 |
|---|---|
| 寝つくまでに時間がかかる | 就寝時刻や体内時計、緊張、夕方以降のカフェインを確認。入眠を助ける薬を候補にする。 |
| 夜中に起きる・朝早く目覚める | 痛み、頻尿、いびき、気分の落ち込みなどを評価。睡眠の維持への効果も考えて選ぶ。 |
| 朝に眠気やふらつきが残る | 量、服用時刻、睡眠時間、併用薬を見直す。減量や変更を検討する。 |
| 高齢・転倒歴がある/夜間に介護などがある | 転倒や判断力低下の危険を重視。夜間に起きて活動する可能性も、処方前に必ず伝える。 |
この表は、症状から自分で薬を選ぶための対応表ではありません。年齢、肝臓・腎臓や呼吸の状態、妊娠・授乳、これまでの治療歴を含めて判断します。特に高齢の方では、少量でも影響が強く出ることがあります。
代表的な睡眠薬の特徴と注意点
ここでは、一般的に使用されることの多い睡眠薬や、新しい選択肢を紹介します。薬剤名は商品名(一般名)で記載しています。処方量や組み合わせは個別に決めるもので、以下は自己調整のための説明ではありません。
マイスリー(ゾルピデム酒石酸塩)
非ベンゾジアゼピン系と呼ばれる睡眠薬で、主に寝つきの悪さに対して使われます。比較的短時間に作用する薬ですが、翌朝の眠気やふらつきが起こることはあります。
服用後の出来事を覚えていない、十分に目覚めないまま歩く・食べるなどの行動に注意が必要です。そのような症状があれば、次の服用をせず、速やかに処方医へ連絡してください。連用による依存や急な中止後の不眠にも注意します。なお、添付文書上、統合失調症・躁うつ病に伴う不眠症は適応から除かれています。[6]
ルネスタ(エスゾピクロン)
こちらも非ベンゾジアゼピン系です。寝つきを助けるほか、眠りの維持も考えて選ばれることがあります。特徴的な副作用に、口の苦味などの味覚の変化があります。気になる場合は我慢せず相談してください。
「非ベンゾジアゼピン系なら依存しない」という意味ではなく、依存、ふらつき、記憶が抜けること、睡眠中の異常行動に注意します。十分に目覚めないまま行動した場合は、次の服用をせず処方医に連絡します。[7]
デパス(エチゾラム)
不安や緊張を和らげる抗不安薬で、ベンゾジアゼピン受容体に作用します。神経症、うつ病、特定の心身症、統合失調症に伴う睡眠障害などに適応があります。不眠全般に一律に選ぶ薬ではなく、背景の病気を確認して使う薬です。
眠気に加え、筋肉を緩める作用によるふらつき・転倒、依存や離脱症状に注意が必要です。特に長く飲んでいる方は、急に減らす・やめることを避けてください。[8]
ロゼレム(ラメルテオン)
メラトニンという、眠りのリズムに関わるホルモンの受容体に作用し、不眠症における寝つきの悪さを改善する薬です。強い鎮静を感じるかどうかだけで効果を判断せず、睡眠習慣と一緒に経過をみます。添付文書では、開始2週間後を目安に効果・安全性を評価します。
ベンゾジアゼピン受容体に作用する薬とは仕組みが異なりますが、眠気やめまいが起こることはあります。食事と同時・食直後の服用は避けます。特定の抗うつ薬との併用が禁忌のため、お薬手帳で飲み合わせを確認することが大切です。[9]
デエビゴ(レンボレキサント)
覚醒を維持する「オレキシン」の働きを抑える薬です。寝つきと、夜中に目覚めてしまう症状の双方を考慮する際の選択肢になります。
翌日の眠気、悪夢、金縛りのような症状などが起こることがあります。一部の抗菌薬や抗真菌薬などとの併用では、薬が体内に残りやすくなり、減量が必要です。他院で薬を追加されたときも確認してください。食事と同時・食直後は、効き始めが遅れる可能性があります。[10]
クービビック(ダリドレキサント塩酸塩)
オレキシン受容体拮抗薬の一つで、寝つきや睡眠の維持を助けます。同じ分類の薬でも、体内から減っていく速さや用量は異なるため、夜の効果と翌日の状態をみて調整します。
翌朝の眠気、悪夢、金縛りのような症状に注意します。一部の抗菌薬、抗真菌薬、新型コロナ治療薬などは併用禁忌で、重い肝機能障害がある場合も使用できません。「新しい薬なら翌日も安全」とは判断しないことが大切です。[11]
ボルズィ(ボルノレキサント水和物)
2025年11月に販売が始まったオレキシン受容体拮抗薬です。不眠症に用いられ、健康成人の試験では血中濃度が半分になるまでの時間が約2時間と、比較的短い特徴があります。ただし、「2時間で効果が切れる」「翌朝の眠気が出ない」という意味ではありません。
眠気、悪夢、ふらつきなどに注意し、一部の抗菌薬・抗真菌薬・新型コロナ治療薬などとは併用できません。運転については医師が状態を把握して慎重に可否を判断する記載であり、自由に運転できる薬ではありません。眠気などがあるときは運転しないでください。[12]
睡眠薬と安全に付き合うための5つのポイント
1.飲酒と組み合わせない
お酒は睡眠を浅くし、途中で目が覚める原因になります。睡眠薬と重なると、眠気や判断力低下、ふらつきなどが強まるおそれもあります。「お酒で眠れないから薬を足す」という飲み方は避けましょう。[1、6–12]
2.飲む時刻と量を守り、夜中に追加しない
就寝前に指示された薬は、身支度を終え、すぐ寝られる状態で服用します。眠れないからと追加すると、翌朝まで影響が残る場合があります。服用後に仕事や介護などで起きる予定がある方、十分に眠る時間を取れない方は、あらかじめ医師に伝えてください。飲み忘れたときも、2回分をまとめて飲まないでください。
3.運転の予定を必ず伝える
今回紹介した薬のうち、ボルズィ(ボルノレキサント水和物)以外の6剤には、添付文書上、自動車の運転など危険を伴う機械操作に従事させない旨の注意があります。ボルズィ(ボルノレキサント水和物)も医師の慎重な判断が必要です。「眠気を感じないから運転してよい」と自己判断しないでください。仕事で運転する方も、薬を選ぶ段階で相談する必要があります。
4.ほかの薬・市販薬もまとめて確認する
風邪薬、アレルギーの薬、市販の睡眠改善薬などにも眠気を起こす成分があります。処方薬だけでなく、市販薬やサプリメントも伝えましょう。肝臓や腎臓の病気、睡眠時無呼吸症候群、妊娠・授乳についても事前の確認が欠かせません。
5.「眠れたか」に加えて、翌日の状態を記録する
就寝・起床時刻、夜中の目覚め、服用時刻、翌朝の眠気・ふらつきを簡単にメモすると、診察で役立ちます。記憶の抜けや寝ぼけた行動があれば、家族が気づいた内容も伝えてください。
睡眠薬はいつまで飲む?減薬・中止は段階的に考える
薬を始めるときから、「何が改善すれば見直すか」を共有しておくと安心です。夜の不眠と日中の不調が落ち着いたら、継続の必要性や、減量・休薬を検討します。長く必要な場合もありますが、同じ処方を続けるだけでなく、効果と副作用を定期的に確かめます。[2、3]
ベンゾジアゼピン受容体に作用する薬を続けている場合、急な中止で一時的に不眠が強くなる「反跳性不眠」や、不安・震えなどの離脱症状が出ることがあります。減らす速さは、薬の種類、使用期間、量、症状によって異なります。画一的な減薬スケジュールを自分で当てはめず、医師と少しずつ進めましょう。
よくあるご質問(Q&A)
Q.睡眠薬は毎日飲む方がよいですか?眠れない日だけですか?
A.薬の種類と治療の目的によって違います。毎日決まったタイミングで経過をみる場合と、必要時に使う場合があるため、処方時の指示を確認してください。自己判断で飲む日を変えると、効果や不調の原因を見極めにくくなります。
Q.効かなくなった気がします。強い薬に変えるべきですか?
A.まず、睡眠習慣、ストレス、飲酒、服用時刻、ほかの病気や薬を見直します。量を増やす以外に、種類の変更や薬以外の治療が適することもあります。夜中の追加服用で対応しないでください。
Q.薬をやめた翌日に眠れませんでした。もうやめられませんか?
A.一晩眠れなかっただけで判断はできません。もとの不眠の再燃のほか、急な中止による反跳性不眠も考えます。薬の名前、最後に飲んだ日、症状を処方医に伝え、減らし方を見直します。
Q.新しい睡眠薬の方が、必ず安全ですか?
A.新旧だけでは決まりません。依存、転倒、翌日の眠気、飲み合わせなど、確認する点は薬ごとに違います。使い慣れた薬でも定期的な見直しが必要で、新しい薬にも注意点があります。
Q.市販の睡眠改善薬に替えてもよいですか?
A.処方薬の代わりとして自己判断で替えたり、併用したりしないでください。市販薬は慢性的な不眠の原因を治療するものではなく、眠気やふらつきなどが重なることもあります。使用している製品名を医師・薬剤師に伝えて相談しましょう。
新橋・汐留で、不眠や睡眠薬について相談したい方へ
「薬を始めるほどなのか」「今の薬を続けてよいのか」と迷っている段階でも、ご相談ください。診察では夜の眠りだけでなく、日中の仕事や家事、運転、持病との関わりも確認します。
受診時には、お薬手帳と、1~2週間程度の眠りのメモがあると役立ちます。記録がなくても受診は可能です。他院の処方、市販薬、飲酒量、翌朝のふらつきなど、気になっていることをお伝えください。
伊原医院は東京都港区東新橋1-7-1 汐留メディアタワー地下2階にある、内科・循環器内科の医院です。都営大江戸線「汐留駅」地下2階直結、JR「新橋駅」から徒歩約4分(地上ルート)です。
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本記事は2026年10月1日時点で確認できる公開情報に基づき、成人の不眠と薬物治療の一般的な考え方を説明しています。薬の適応、禁忌、飲み合わせには個別の条件があるため、実際の処方は最新の添付文書と診察に基づいて判断します。
参考情報
- 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」(2024年9月一部修正)・Good Sleepガイド
- 厚生労働科学研究班・日本睡眠学会「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」(2014年公開改訂版)
- 日本睡眠学会「睡眠薬の安全で安心な使用法について」
- 日本睡眠学会「睡眠障害の治療」
- 日本睡眠学会「不眠症に対する認知行動療法マニュアル」公開資料
- PMDA:マイスリー(ゾルピデム酒石酸塩)電子添文
- PMDA:ルネスタ(エスゾピクロン)電子添文
- PMDA:デパス(エチゾラム)電子添文
- PMDA:ロゼレム(ラメルテオン)電子添文
- PMDA:デエビゴ(レンボレキサント)電子添文
- PMDA:クービビック(ダリドレキサント塩酸塩)電子添文
- PMDA:ボルズィ(ボルノレキサント水和物)電子添文
上記資料は2026年10月1日に確認。ガイドラインの公表年と、薬剤情報の更新時期は異なります。新しい薬剤の説明は各薬剤の電子添文を参照しています。
この記事の監修者

医療法人社団優春会伊原医院 理事長
山下 理比路
- 医師/医学博士
- 日本集中治療医学会 集中治療専門医
- 日本医師会認定 産業医
- 日本内科学会 正会員
- 日本循環器学会 正会員
- 日本医師会「かかりつけ医機能報告制度にかかる研修」修了
