- 2026年9月3日
帯状疱疹ワクチンと認知症リスク低下との関連は?注目される副次的な効果や費用助成について解説
帯状疱疹ワクチンは、帯状疱疹と帯状疱疹後神経痛を予防するためのワクチンです。近年は本来の目的に加えて、認知症や心血管疾患、慢性腎臓病の経過にも良い影響を与える可能性が相次いで報告され、注目を集めています。
一方、これらの「副次的な効果」は、まだ研究段階です。帯状疱疹ワクチンが認知症、心不全、心房細動、腎不全を予防すると確定したわけではなく、現行のガイドラインでも、これらの病気の予防を目的とした接種は推奨されていません。
今回は、2026年9月時点の厚生労働省・関連学会・最新の論文をもとに、どこまで分かっているのかを整理します。港区の費用助成についても解説します。
帯状疱疹ワクチンの本来の目的
帯状疱疹は、水ぼうそうにかかった後に体内へ潜伏した水痘・帯状疱疹ウイルスが、加齢や免疫力の低下などをきっかけに再び活動して起こる病気です。身体の左右どちらかに痛みや水疱が現れ、皮膚症状が治った後も痛みが続く帯状疱疹後神経痛を残すことがあります。
厚生労働省によると、帯状疱疹の発症は70歳代で最も多くなります。2025年度からは、65歳の方などを対象に予防接種法に基づく定期接種が始まりました。

2種類のワクチンがあります
- 組換えワクチン(シングリックス):2か月以上の間隔をあけて2回、筋肉内に接種します。免疫機能が低下している方などでは、医師の判断により1か月まで短縮できる場合があります。
- 生ワクチン(乾燥弱毒生水痘ワクチン):皮下に1回接種します。病気や治療で免疫機能が低下している方は接種できません。
厚生労働省の資料では、帯状疱疹に対する予防効果は、組換えワクチンが接種後1年で9割以上、5年で9割程度、10年で7割程度、生ワクチンが1年で6割程度、5年で4割程度とされています。帯状疱疹後神経痛に対しても予防効果が認められています。
組換えワクチンは予防効果が高く長く続く一方、接種部位の痛み、筋肉痛、疲労、発熱などが比較的多くみられます。生ワクチンは1回で済み、副反応は比較的少ないものの、効果や持続期間、接種できる方に違いがあります。年齢、持病、治療内容、接種回数、費用を含めて医師と相談しましょう。
なぜ「副次的な効果」が研究されているの?
帯状疱疹を発症すると、ウイルスの再活性化に伴う炎症や血管への影響が起こり、脳卒中や心筋梗塞などのリスクが一時的に高まる可能性が報告されています。また、神経に潜伏するウイルスや免疫反応と認知機能との関係も研究されています。
そのため、帯状疱疹そのものを防ぐことや、ワクチンによる免疫反応が、神経・心血管・腎臓に間接的な利益をもたらすのではないかと考えられています。ただし、詳しい仕組みはまだ分かっていません。
認知症の予防・発症の遅延につながる可能性
2025年に医学誌『Nature』へ発表された英国ウェールズの自然実験では、生ワクチンを受けた人は、7年間に新たに認知症と診断される確率が相対的に20.0%低く、絶対差では3.5ポイント低いと推定されました。生年月日による接種対象の境界を利用して似た集団を比較した研究で、一般的な観察研究より交絡の影響を受けにくい点が特徴です。
また、2024年の『Nature Medicine』の研究では、組換えワクチンを主に受けた集団は、生ワクチンを主に受けた集団より、6年間で認知症と診断されずに過ごす時間が17%長く、後に認知症となった人では診断までの期間が平均164日長いという関連が示されました。2026年にも組換えワクチンと認知症リスク低下の関連を示す大規模な観察研究が複数報告されています。
ただし、認知症には年齢、生活習慣、教育歴、受診行動、基礎疾患など多くの要因が関係します。ワクチンを受ける人は健康管理への関心が高いという健康接種者バイアスも完全には除けません。現時点で、認知症予防だけを目的に帯状疱疹ワクチンを勧める段階ではありません。
心不全・心房細動など心血管疾患との関係
2025年の『European Heart Journal』に掲載された韓国の全国規模の研究では、約127万人を解析し、生ワクチン接種者は非接種者と比べて心血管イベント全体が少ない傾向にありました。関連の大きさは、心血管イベント全体で23%、心不全で26%、心房細動で29%低いというもので、最大8年間にわたって関連がみられました。
さらに2026年8月の『Nature Medicine』では、米国で生ワクチンから組換えワクチンへ急速に切り替わった時期を利用した自然実験が報告されました。組換えワクチンを主に受けた集団は、生ワクチンを主に受けた集団より、7年間の虚血性心疾患・心不全・虚血性脳卒中を合わせた疾病負担が9%少なく、心不全は12%、心房細動は7%少ない関連が示されました。
いずれも重要な結果ですが、心不全や心房細動を主要目的として行われた無作為化比較試験ではありません。血圧、糖尿病、喫煙、運動、服薬、医療へのアクセスなど、測定しきれない違いの影響が残る可能性があります。
慢性腎臓病の心血管イベント・腎不全進行との関係
慢性腎臓病(CKD)の方は免疫機能が低下しやすく、帯状疱疹の発症リスクが高いとされています。帯状疱疹ワクチンがCKD患者さんの帯状疱疹を減らすことについては、これまでの研究でも支持されています。
2026年8月に『Hypertension Research』へ発表された米国の医療データを用いた研究では、50歳以上のCKD患者さんについて、組換えワクチン接種者13,218人と非接種者13,218人を比較しました。中央値3.0年の追跡で、末期腎不全への進行または透析導入を合わせた腎イベントは37%低い関連、心血管イベントは26%低い関連が示されました。
ただし、この研究も後ろ向き観察研究です。結果は「ワクチンにより腎不全の進行を予防できる」と証明するものではありません。CKDの治療では、血圧・糖尿病の管理、適切な薬物療法、禁煙、減塩、定期的な腎機能検査など、確立した対策を続けることが最も重要です。
最新研究をどう受け止めればよい?
- 帯状疱疹と帯状疱疹後神経痛を予防する効果は確立しています。
- 認知症、心不全、心房細動、腎不全進行などへの良い影響は、現時点では「関連」または「可能性」の段階です。
- これらの病気の予防目的で承認されたワクチンではなく、国内の各種ガイドラインでもその目的での接種は推奨されていません。
- 帯状疱疹ワクチンを接種しても、認知症・心血管疾患・腎臓病に対する通常の予防や治療を置き換えることはできません。
2026年には、デンマークで約16万2,000人を対象に、組換えワクチンが心血管イベントと認知症を減らすかを調べる大規模な無作為化試験「DAN-ZOSTER」が開始されました。結果が予定される2029年以降まで含め、今後の研究を注意深く見ていく必要があります。
2026年度の港区の費用助成
港区では、定期接種の対象者と、それ以外で早めの接種を希望する対象者に対して制度が分かれています。以下は2026年度(令和8年4月1日~令和9年3月31日)の内容です。
定期接種の対象者は無料
2026年度中に65・70・75・80・85・90・95・100歳になる港区民の方、および60~64歳でHIVによる免疫機能障害があり、身体障害者手帳1級相当の方が対象です。港区が発行する予診票を実施医療機関へ持参すれば、接種費用は無料です。
組換えワクチンを選ぶ場合は、年度内に2回の接種を終える必要があります。港区は、3月末までに完了するため、1回目を1月31日までに接種するよう案内しています。
任意接種の一部助成
定期接種の対象年度ではない50歳以上の港区民の方と、病気や治療により免疫機能が低下している、または低下する可能性がある18~49歳の港区民の方には、港区独自の一部助成があります。18~49歳の方が助成を受けられるのは組換えワクチンのみです。
- 組換えワクチン:自己負担7,000円/1回(2回接種)
- 生ワクチン:自己負担2,000円(1回接種)
生活保護または中国残留邦人等支援給付を受けている方は費用が免除されます。助成を受けるには、接種前にみなと保健所へ電話または電子申請で予診票を申し込み、原則として港区内の実施医療機関で接種する必要があります。接種後に費用を請求する償還払いはありません。
任意接種の助成を利用して接種を完了すると、後に定期接種の対象年齢になっても無料の定期接種は受けられません。年度や接種歴によって条件が異なるため、申請前に港区の最新情報をご確認ください。
よくあるご質問(Q&A)
Q. 帯状疱疹にかかったことがあっても、ワクチンを接種できますか?
A. はい。帯状疱疹にかかった後も再発することがあるため、過去に発症した方も接種を検討できます。皮膚症状や急性期の症状が治まってから、持病や治療内容も含めて医師にご相談ください。
Q. 生ワクチンと組換えワクチンは、どちらを選べばよいですか?
A. 組換えワクチンは予防効果と持続性が高い一方、2回接種が必要で、接種後の痛みや発熱などが比較的多くみられます。生ワクチンは1回で済みますが、免疫機能が低下している方は接種できません。年齢、持病、治療、過去の接種歴、費用を踏まえて医師と決めましょう。
Q. 接種すれば、認知症や心不全、心房細動、腎不全も予防できますか?
A. 現時点では断定できません。リスク低下との関連を示す研究は増えていますが、主に観察研究や自然実験で、認知症・心血管疾患・腎不全の予防効果として承認・推奨されているわけではありません。これらの病気に対する通常の予防・検査・治療は継続してください。
Q. 港区の助成を受けるには、先に何をすればよいですか?
A. 接種前に、みなと保健所へ電話または電子申請で予診票の発行を依頼してください。予診票が届いてから実施医療機関へ予約します。接種後の払い戻しはないため、必ず事前に手続きを行い、予診票の有効期限と2回目までの接種スケジュールをご確認ください。
帯状疱疹ワクチンを検討中の方は伊原医院へご相談ください
帯状疱疹ワクチンには、種類ごとに効果の持続期間、接種回数、副反応、接種できる条件、費用が異なります。特に、心臓病、慢性腎臓病、糖尿病、免疫機能に関わる病気がある方や、免疫を抑える治療を受けている方は、主治医と相談して接種時期とワクチンの種類を決めることが大切です。
新橋・汐留・港区周辺で帯状疱疹ワクチンをご検討の方は、伊原医院までご相談ください。港区の助成を利用する場合は、あらかじめ予診票をご用意いただき、ワクチンの在庫や予約方法を事前にご確認ください。
本記事は、2026年9月3日時点の厚生労働省、港区、日本老年医学会の情報、および下記の原著論文・研究登録を踏まえて作成しています。研究中の副次的効果については、今後の無作為化比較試験やガイドライン改訂により評価が変わる可能性があります。
参考情報
- 厚生労働省「帯状疱疹ワクチン」
- 港区「帯状疱疹ワクチン予防接種」
- 日本老年医学会「65歳以上の成人で接種を検討すべきワクチン」
- Eyting M, et al. A natural experiment on the effect of herpes zoster vaccination on dementia. Nature. 2025.
- Taquet M, et al. The recombinant shingles vaccine is associated with lower risk of dementia. Nature Medicine. 2024.
- Live zoster vaccination and cardiovascular outcomes: a nationwide, South Korean study. European Heart Journal. 2025.
- Recombinant shingles vaccination and the risk of cardiovascular events. Nature Medicine. 2026.
- Recombinant zoster vaccine and risk of kidney failure, cardiovascular, and mortality in patients with chronic kidney disease. Hypertension Research. 2026.
- ClinicalTrials.gov「DAN-ZOSTER」NCT07485283
この記事の監修者

医療法人社団優春会伊原医院 理事長
山下 理比路
- 医師/医学博士
- 日本集中治療医学会 集中治療専門医
- 日本医師会認定 産業医
- 日本内科学会 正会員
- 日本循環器学会 正会員
- 日本医師会「かかりつけ医機能報告制度にかかる研修」修了
